ニュースの概要
Amazonは、13メガピクセルのカメラを備えた新型「Echo Studio with Home Camera」を発表した。あわせて、Advanced Room Adaptationという新しい音響調整機能を打ち出している。Amazonによると、この機能は設置された部屋の響き方を継続的に調べ、音を自動で整える。さらに、利用者が部屋のどこにいるかを把握し、歩き回っても音楽やオーディオブックの音量が変わらないように保つという。従来のスピーカーは、設置時に一度だけ測定して終わるものが多かった。今回は使いながら調整し続ける点と、カメラという新しい感覚器を持った点が特徴である。ドルビー対応の空間オーディオにも触れられており、スピーカーが家庭内の見守り機器も兼ねる方向へ進んだ形だ。
引用元: Amazon、室内音響を自動調整する新機能搭載のEcho Studioを発表(Ars Technica)
分析・見解
一度きりの測定から、常時の自動調整へ
部屋の響きを測って音を補正する技術自体は新しくない。AppleのHomePodやSonosのTruepl ayも、マイクで反響を測り、設置場所に合わせて音を整える。ただし多くは、設置時や置き場所を変えた時に測るだけだった。ソファを動かす、カーテンを替える、人が増える。こうした変化で響きは変わるのに、補正は古いままになりやすい。
Amazonの新機能は、この補正を使用中も続けるという。ここが従来との違いである。一方で、常に調整が走る以上、音が勝手に変わることを不快に感じる人もいるはずだ。調整の強さを利用者が選べるかどうかが、評価を分けるだろう。
位置を知るスピーカーが音量をそろえる仕組み
今回の目玉の一つが、利用者の居場所に合わせて音量を保つ機能だ。キッチンからリビングへ歩くと、スピーカーから遠ざかった分だけ音は小さく聞こえる。それを人の位置に応じて補う発想である。
これを実現するには、人がどこにいるかを知る必要がある。ここでカメラが効いてくる。マイクだけでも声の方向は分かるが、無言で歩く人の位置は拾いにくい。映像を使えば、複数人がいる場面でも位置を捉えやすい。ただし、誰に合わせて音を整えるのかという難問が残る。二人が別々の場所にいれば、全員に最適な音はそもそも存在しない。
音響機器にカメラが載ることの意味
スピーカーは今、音を出す機械から、部屋の状況を読み取る機械へと性格を変えつつある。Amazonはすでに、Ringの玄関カメラやEcho Showで家庭内の映像を扱ってきた。Echo Studioにカメラを足すのは、その延長線上にある。
注意したいのは、カメラの目的が音響調整に限られるのかという点だ。13メガピクセルは、部屋の位置確認には明らかに高い解像度である。見守りや防犯と兼用する設計と考えるのが自然だろう。音のためにカメラを載せたのではなく、カメラを載せる口実として音の利点を示した、という見方も成り立つ。
普及の鍵は処理の場所とプライバシーの説明
この種の製品が受け入れられるかは、映像をどこで処理するかにかかる。本体内で完結し、クラウドに送らないなら、心理的な抵抗はかなり下がる。逆に送信が前提なら、寝室やリビングに置く人は限られる。
過去を見ても、Googleのスマートディスプレイはカメラ有無の二種類を用意し、物理的なシャッターで安心感を補ってきた。Amazonも同様に、カメラを切る手段を目に見える形で示せるかが問われる。性能の説明より先に、信頼の設計を示せた企業が、この市場では勝つ傾向にある。
ビジネスへの影響
店舗や宿泊施設では音の品質管理が手軽になる
飲食店、美容室、小規模なホテルのロビーなどは、専門業者に頼まないと音の調整ができなかった。客が入れば音の響きは変わり、BGMが聞き取りにくくなることもある。使いながら自動で整える機能が実用水準なら、こうした現場の調整コストが下がる可能性がある。
ただし、業務利用ではカメラが大きな壁になる。客の映像を扱うことになり、個人情報の取り扱いや掲示の義務が生じる。導入前に、カメラを物理的に隠せる機種か、法令上の説明が可能かを確認してほしい。
機器メーカーと販売側が今から備えるべきこと
家電や音響機器を扱う事業者にとって、スピーカーが部屋を読み取る機器になる流れは無視できない。売り場では、音の良さに加え、データの扱いを説明できる店員が求められる。
意思決定者が使える判断軸は三つある。映像を本体内で処理するか、利用者がカメラを確実に止められるか、調整機能を手動で切れるか。この三点を、製品選定の最低条件にするとよい。まずは一台を会議室や応接室で試し、音の変化と社員の抵抗感の両方を測ってから、拡大を判断するのが堅実である。
