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木と炭素繊維を貼り合わせた床材は、木造の足音問題をどこまで減らすか

木と炭素繊維を貼り合わせた床材は、木造の足音問題をどこまで減らすかのニュース解説イメージ

本ページは公開情報を整理した業界レポートであり、特定の事業者・製品の推奨ではありません。

ニュースの概要

奥村組と帝人は、木造建築向けの「木質ハイブリッド遮音パネル」を共同で開発した。炭素繊維を使った複合材料と木材を一体にし、合板の2倍以上の硬さ(剛性)を確保したパネルである。遮音といえば重くするのが定石だが、今回は重さを足さずに音を抑える方向を選んだ。実大の試験では、このパネルを使った乾式二重床で、設置前に比べて重量床衝撃音の遮断性能が代表的な63Hz帯で22dB向上し、等級でいえば4ランク分の改善になった。木造住宅やリフォームで悩みの種になりやすい、上階の足音や物が落ちる音への対策として位置づけられている。

引用元: 奥村組と帝人、木質ハイブリッド遮音パネルを共同開発(Excite News / PR TIMES)

分析・見解

重くしない遮音という、発想の逆転

建物の音対策は、長いあいだ「重い壁と重い床」で進められてきた。コンクリートの厚い床が静かなのは、質量が大きく揺れにくいからである。ところが木造では、重さを足すと柱や基礎への負担が増え、構造計算にも響く。今回のパネルは、この前提を変えた。重さではなく硬さで揺れを抑える。炭素繊維は軽くて硬い素材で、釣り竿やゴルフシャフトでもおなじみだ。これを木材と貼り合わせ、合板の2倍以上の剛性を持たせている。

硬い板は、人が歩いた衝撃で大きくたわみにくい。たわみが小さければ、床下の空間に伝わる振動も小さくなる。重さで押さえ込むのではなく、揺れそのものを起きにくくする考え方である。

63Hzで22dB改善という数字の読み方

重量床衝撃音とは、子どもが飛び跳ねる音や物を落とした音のような、ドンという低くて重い音を指す。評価の中心になるのが63Hz前後の低音域で、ここが木造の弱点とされてきた。軽い床は低音をよく響かせるためだ。

この帯域で22dB下がるということは、体感ではかなり大きな差になる。目安として、10dB下がると音の大きさは半分程度に感じられるといわれる。22dBなら、気になっていた音が「聞こえはするが気にならない」程度まで落ちる計算である。等級が4つ上がったという説明も、集合住宅の性能表示で使われるL値の段階に置き換えると、実感しやすい。

ただし、これは実大の試験室での結果である。実際の建物では、壁や梁を伝わって音が回り込む経路もあり、床だけを良くしても全体が同じだけ改善するとは限らない。数字は有望な出発点として受け取るのが妥当だ。

競合する手法との比べ方

既存の対策は大きく三つある。一つ目は、石こうボードや砂入りの重い材を床に重ねる方法で、効果は出るが重く、厚みも増える。二つ目は、床を浮かせる防振ゴムや緩衝材を使う方法で、低音には限界が出やすい。三つ目は、天井側に吸音材を厚く詰める方法で、天井高を削ることになる。

今回のパネルは、これらと並べると「薄く、軽く、後付けしやすい」点に特徴がある。乾式二重床(=水を使わず部材を組み付ける二重床)に組み込める形なので、既存の施工手順を大きく変えずに済みそうだ。

炭素繊維のコストが普及の分かれ目になる

一方で、炭素繊維は価格が高い素材である。最近は産業用途の量産で単価が下がってきたものの、合板と同じ感覚では使えない。普及の鍵は、すべての床に使うのではなく、音が問題になりやすい場所に絞って使えるかどうかだ。

帝人は複合材料の供給元として、奥村組は施工や評価の現場を持つ。素材の会社と建設会社が組んだ点は、研究止まりで終わらせないという意思表示にも見える。木造の中大規模化が進むなか、遮音は避けて通れない課題であり、この組み合わせは今後の選択肢になりうる。

ビジネスへの影響

木造の中高層化で、遮音が商品力を左右する

都市部では木造の3階建て住宅や、木造の中規模ビルが増えている。ここで施主や入居者から最も多く出る不満の一つが、上下階の音である。構造が成立しても、住み心地で評価を落とすと賃貸の空室や分譲の価格に響く。設計や開発に関わる方は、遮音性能を後から足す対策ではなく、企画段階の差別化要素として扱ったほうがよい。

具体的には、仕様書に床衝撃音の目標値を入れ、低音域の数値で比べる習慣をつけたい。平均値だけで判断すると、木造の弱点である63Hz帯の不満を見落とす。

リフォームと中古再生で使い道を見積もる

既存の木造住宅やマンションの木質床を改修する場面では、床を厚くできないことが多い。薄くて軽い部材は、天井高や段差の制約がある案件で力を発揮する。工務店やリフォーム会社は、騒音苦情が出た物件や、二世帯化・賃貸化の改修で候補に入れる価値がある。

ただし、現時点では製品の価格や供給体制は示されていない。見積もりに入れる前に、メーカーに施工条件、単価、納期、第三者機関での試験データを確認することが欠かせない。

導入を判断するための確認項目

意思決定者が最初に押さえるべきは三点ある。第一に、試験が実際の建物に近い条件だったか。第二に、長期の使用で剛性や接着が劣化しないか。第三に、火災時の扱いなど法規上の整理が済んでいるか。これらが揃えば、小規模な案件で試験導入し、入居後の苦情件数で効果を確かめる進め方が現実的だ。

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